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コラム

NSW州メンタルヘルスアクトに基づく強制入院

上田大介, 林由紀夫 · 2022年5月24日

Q:ワーキングホリデーでシドニーに住んでいます。この数週間、環境や言葉の違いからくるストレスで鬱々とした日々を送っていました。先日買い物をしようとしたら、言葉がうまく通じず、むしゃくしゃして店員の胸ぐらをつかんで怒鳴ってしまいました。警官に押さえつけられた事や救急車に乗せられた事は覚えていますが、それ以外は意識が朦朧として何があったのかよく覚えていません。気が付くと、今いる病室に軟禁されていました。私はどうなってしまうのでしょうか。

A:それはMental Health Act(NSW)という法律に基づく、強制入院のケースだと思われます。

例えば暴行事件の疑いがあると判断された場合、通常警察はその被疑者を逮捕し連行します。しかしながら、被疑者に精神疾患が疑われるような場合、警察はMental Health Actに基づき強制入院の手続きに進むことがあります。なぜならば、刑法上、精神障害の度合いによってはその人はその行動に対し、刑事責任を問われない場合があるからです。このMental Health Actの主旨は、精神疾患を患っている人の人権を尊重しつつ、必要に応じ保護し、社会秩序を守るというものです。

一般的な流れとして、強制入院後、被疑者には二名の医師が割り当てられます。それらの医師の両方が「この患者は引き続き入院が必要」と判断すると、入院から2週間以内に、Mental Health Review Tribunalという裁決機関での手続きに移ります。一回目のTribunalのヒアリングでは「合法的に強制入院の手続きが行われた」かを確認し、医師等からの診断を基に、患者の入院の継続あるいは退院の判断がされます。退院となった場合、刑事事件につき訴追されるか否かは警察の判断に委ねられます。もし初回のTribunal ヒアリングで入院継続という判断がされた場合には、次は(通常)3名の審査官により再度、Tribunalヒアリングが行われ、退院か、あるいは最大3か月の入院延長の判断がされます。このTribunalヒアリングでは、本人にも弁護人が付く事になります。ちなみに弁護士を私的に任命できない場合にはリーガルエイドという国選弁護士をつけることも可能である場合があります。

保護者、例えば親などが近くにいれば、早期の退院が認められるケースは多いのですが、ワーキングホリデーや学生ビザ等、日本の家族から離れてシドニーで一人暮らしの方で、かつ、「こんなことを家族には知られたくない」というケースでは、保護者が不在ということで退院が遅れてしまうことも考えられます。

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