法務・ビジネス・規制に関するインサイトと分析

労働法訴訟,雇用 · コンサルタント契約,競業避止義務
2026年5月29日
豪州子会社および外国法人に対する現代奴隷制報告義務 年度の折り返しを迎え、多国籍企業のオーストラリア子会社やオーストラリアで事業を行う一部の外国法人にとっては、現代奴隷報告書(Modern Slavery Statement)の作成準備を進める時期となりました。 本記事では、外国資本グループが見落としがちな「連結収益」の考え方を中心に、オーストラリアにおける現代奴隷報告義務の概要と最新の規制動向について解説します。 報告義務の概要 オーストラリア連邦法の現代奴隷法(Modern Slavery Act 2018 (Cth)、以下「本法」)は、売上高基準を満たす法人に対し、年次の現代奴隷報告書の提出を義務付けています。 報告書は、その報告対象法人の会計年度末から6か月以内に提出しなければなりません。 報告義務の対象企業 本法の適用対象は以下のとおりです。 • オーストラリア法人:年間連結収益が1億豪ドル以上の法人 • オーストラリアで事業を営む外国法人(例:海外企業のオーストラリア支店):年間連結収益が1億豪ドル以上の法人 本法における連結収益は、オーストラリア会計基準に従って算定されます。したがって、単一の法人のみならず、より広範な企業グループ全体を考慮する必要が生じる場合があります。 1. 億豪ドル基準:連結収益の考え方 報告義務の判定基準は、オーストラリア子会社単体の売上高ではなく、企業グループ全体の連結収益です。この点は実務上見落とされることが少なくありません。 すなわち、オーストラリアに事業拠点および/または子会社を有する企業は、親会社および子会社の双方において当該基準を充足するか否かを検討する必要があります。 たとえば、以下のようなケースが考えられます。 • オーストラリア子会社の現地売上高が3,000万豪ドルであっても、当該子会社とは別に(例えばオーストラリア支店等を通じて)オーストラリア国内で事業を営んでおり、かつ当該外国企業の売上高(オーストラリア子会社分を除く)が8,000万豪ドルに達している場合は、連結売上が1億豪ドルを超過することになり、報告義務を負う可能性があります。 • 現地売上高が3,000万豪ドルのオーストラリア子会社であっても、その傘下に外国法人があり、当該外国法人の海外売上高が8,000万豪ドルに達する場合には、連結売上が1億豪ドルを超過することになり、報告義務が生じる可能性があります。 このような仕組みにより、アジア太平洋、欧州、北米の親会社の下で大規模なグローバル事業を展開するオーストラリア法人や支店の多くが、想定外に報告義務の対象となるケースが見受けられます。 必須記載事項 各報告書には、以下の7つの必須項目を記載する必要があります。 1. 報告対象法人の概要 2.

相続・遺言書
2025年12月19日
オーストラリア国内に資産を所有したまま人が亡くなると、多くの場合、遺産相続に関して一定の法的・実務的手続きを行う必要が生じます。 まず最初に確認すべき事項は、故人が遺言書(Will)を残しているかどうかです。遺言書が存在する場合、通常はその中で、遺産相続手続きを統括する責任者として「遺言執行者(Executor)」が任命されています。相続手続きは、原則としてこの遺言執行者が中心となって進めることになります。 一方、遺言書を残さずに死亡した場合、遺産は法律で定められた法定相続分および法定の優先順位に従って分配されます。この場合、遺族の中から、遺産相続実務を担当する責任者として「遺産管理人(Administrator)」が選任されます。 次に確認すべきは、相続および分配の対象となる遺産の内容です。遺産の種類や保有形態によっては、裁判所に対して遺言書の検認(Probate)の申立て、または遺産管理分配許可証(Letters of Administration、以下「LOA」)の発行申請を行う必要があります。 プロベートやLOAの申請は裁判所での正式な手続きとなるため、弁護士に手続きの代行を依頼するケースが一般的です。もっとも、遺産の内容によっては、プロベートやLOAを取得することなく相続手続きを進められる場合もあります。 プロベートまたはLOAを取得した後(あるいはそれらが不要な場合)には、各遺産の具体的な相続・分配作業に移行します。例えば、金融機関との連絡、銀行口座の解約や残高の送金、不動産の売却や名義変更など。相続手続きの責任者が十分な英語能力を有していれば、遺言執行者または遺産管理人が自ら金融機関や不動産業者とやり取りを行うことも可能です。 しかし、相続手続きの責任者が日本在住であったり、英語での実務対応に不安がある場合には、これらの遺産分配実務についても弁護士等の代理人に依頼することが現実的かつ有効な選択肢となります。 いずれにしても、どのような相続手続きが必要となるのかを早期に見極めるためにも、できるだけ早い段階で、オーストラリアの遺産相続実務に精通した弁護士に相談し、適切な助言を受けることが重要です。

FIRB、印紙税、土地税、GSTに関するアドバイス,商業・住宅用不動産の売却・購入,商業·小売物件賃貸リース,不動産関連の紛争,抵当権(不動産ローン),FIRB、印紙税、土地税、GSTに関するアドバイス
2025年12月4日
土地や住宅を購入する際、登記上に記載されている「土地利用制限」(Restriction on Use)に注意する必要があります。これらは、購入後の利用や将来の売却に大きな影響を及ぼす可能性があります。 「土地利用制限」とは? 「土地利用制限」とは、土地の使い方を制限する規則のことです。例えば、「特定の建材しか使用できない」「建物の高さやデザインに制限がある」「商業利用を禁止する」「どのような建物を建てられるか」「樹木の伐採禁止」といった基準が設けられ、分譲地全体の品質・景観・資産価値を守る役割を果たしています。 設定するのは主に開発業者や自治体(カウンシル)です。開発業者は分譲地の価値維持を目的に、自治体は都市計画や環境整備の一環として設定する場合があります。 違反した場合のリスク(NSW州での取り扱い) 「土地利用制限」に違反したからといってすぐにトラブルになるとは限りませんが、NSW州では、土地に付帯する制限に違反する行為を行うと、以下のようなリスクが発生し、深刻な問題につながる可能性があります。 • 自治体からの差止命令・是正命令 • 開発申請の拒否・証明書発行の拒否・建築の不許可 • 違反建築物の撤去命令 • 損害賠償請求 • 近隣の住人からの法的措置 • 売却時の困難(買主側の弁護士が違反を発見すると、購入希望者が契約を撤回する、大幅な価格交渉を受ける、売主に補償や是正義務を負わせる要求をされるといったような不利益が生じる可能性があります。) 「土地利用制限」は、その土地の承継人にも全面的に引き継がれる義務です。例えば、前の所有者が保護された樹木を伐採して違反した場合でも、現所有者はその是正責任を負い、再植樹や環境補償措置を命じられるリスクがあります。違反状態が未解消のままであれば、上記のような実務的リスクが極めて大きくなります。現所有者は過去の違反行為そのものについては責任を負いませんが、土地が制限に適合した状態に戻るまでの是正義務を免れることはできません。 弁護士に相談する重要性 「土地利用制限」は、不動産購入後の生活や投資に直結する重要な要素です。同制限の条件は複雑で不明瞭な場合が少なくありません。専門的な知識がなければ正確に理解するのは困難です。購入前に弁護士が確認すれば、既存の建物が制限に違反していないかをチェックでき、将来的なリスクを避けることが可能です。知らずに違反してしまうと、思わぬ損失やトラブルを招きかねません。購入・売却を検討される際は、必ず専門家にご相談ください。 当事務所では、NSW、QLD、VICの不動産取引に関する豊富な経験を持つ弁護士が、契約内容や制限条項の確認、将来的なリスクの回避について丁寧にサポートいたします。初回相談のご予約や詳細については、お電話またはメールにてお気軽にお問い合わせください。