Q:最近、カジュアル従業員の一人が自主的にシフトを多く入れて働いているのですが、過労状態になっているように思います。どのように対処したらよいでしょうか?
A:従業員の過労問題は、労働衛生安全上の問題として、NSW州ではWorkplace Health and Safety Act 2011(略して「WHS」)により、雇用主に然るべく対応する義務が定められています。尚、同法によりその労働安全衛生管理義務は、雇用者だけでなく、その職場で働く全ての者に課されています。
労働安全衛生管理義務は要約すると、「仕事に携わる者は、その職場で仕事に関連する者の健康と安全を守るべく妥当な注意払わなければならない」ということです。
雇用者側の会社役員やマネージャー等は、上記に加え、WHS管理者としての個人的な責任をも負わされる場合があります。雇用者側はその義務として、過労防止及び対応のための就業規則及びポリシーを設けなければなりません。具体的には、従業員らが過労状態に陥らないよう適切にモニターし、過労が疑われるような状況が生じた場合には、就業規則及びポリシーに基づいた対応を取る必要があります。
過労の問題は、当人の心身の問題だけではなく、他者に被害を及ぼすこともありえます。(例:過労状態で車両の運転や機械の操作をした際の事故等)従い、過労問題は個人だけでなく職場全体として対処されなければならない深刻な問題だとして重要視されています。
万が一従業員が過労により病気や怪我等を負った場合、又は内部告発等があった場合、通常WHSの行政機関であるSafe Work NSWが調査に入ります。調査の結果次第では是正勧告、罰金などの命令が出されることがあります。もしもWHS管理の不備が原因で従業員が過労のため入院、死亡等のような重大な結果が生じてしまった場合、雇用者側に対し多額な罰金に加え、管理者が刑事責任を問われる事も考えられます。
一般的なWHSの問題、例えば危険物の管理や、重量物の扱い、アスベストの処理等と異なり、過労問題は必ずしも職場の環境だけが原因で発生するとは限りません。勤務時間外の従業員の行動(例:副業や、家事・育児)によってもリスクが上昇するので、雇用者として完全な管理をするのが難しい面があるのも事実です。しかし法律上、そうした事柄も含め、雇用者は妥当な範囲で従業員の健康を管理する義務を負わされています。