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商取引に関し、我々は「個々のクライアントのニーズ」をもっとも重要視し、常に実践的かつ柔軟な発想に基づく的確なアドバイスの提供を心がけています。また、長年の経験を生かした商業契約の交渉及び書類作成にあたっています。近年は数多くのクロスボーダーM & A案件を扱っています。Heads of Agreement、Share Purchase Agreement、 Shareholders Agreement 等のM & A関連の契約書の作成及び交渉に加え、Legal Due Diligenceも行っています。会社法の分野においては、会社の設立から、役員の責任、ガバナンスなど多岐にわたる法務を行っています。

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商取引及び会社法

最新判例から見る取締役の義務

オーストラリアは企業統治において、世界的にも最も規制の厳しい国の一つとされています。これは一方で、透明性や説明責任、利害関係者保護への強い姿勢を示すものである反面、海外投資家や新規参入企業にとっては複雑な規制環境を理解する上で大きな課題ともなります。 海外投資家がオーストラリアに進出し、現地法人を設立または買収する際、第一歩として新たな取締役を任命することが一般的です。しかし、この役割は形式的なものだけではなく、取締役には Corporations Act 2001 (Cth)(オーストラリア会社法)に基づく広範な義務が課せられます。これには、会社の利益のため誠実に行動する義務(fiduciary duty)、最善利益義務・善管注意義務、地位や情報の不正利用の禁止などが含まれます。 2025年に下された Sunnya Pty Ltd v He (以下「Sunnya事件」)などの判例は、これら義務がいかに幅広いかを明示しました。以下、同判決を踏まえながら取締役義務の主要点について解説します。 取締役の信託義務の存続性 信託義務(fiduciary duty)とは、英米法において、他者の利益を優先し誠実・忠実に行動すべき法的義務を指します。典型的には受託者、代理人、会社取締役などが負い、自身の利益よりも依頼者や会社の利益を守ることが求められます。 Sunnya事件では、取締役の信託義務(Fiduciary duty)が退任後も存続するのかが問われました。 当事件ではSunnya社の元取締役が同社の商標を、他の取締役に知らせずに自ら関与する別会社へ移転しようとし、その後退任してからもSunnya社と類似の商標を登録し、使用して事業を継続しました。これは、退任後であっても信託義務の違反となると判断され、元取締役に対して損害賠償が命じられました。 この判決により、「退任によって義務を免れることはできない」という原則が改めて強調されました。 注意義務・善管注意義務(s180) 取締役は会社法180条により合理的な注意・配慮をもって職務を遂行する義務があります。これは「同様の立場にある合理的な人物はどうするか」を基準として判断されます。 2024年の ASIC v Holista Colltech Ltd事件では、会社が虚偽の販売実績を報告した結果、株価操作につながり、会社に180万ドルの罰金が科されました。さらに、当該社長個人にも罰金15万ドルと4年間の取締役資格停止が命じられ、ASICの訴訟費用20万ドルの支払いも命じられました。 この事例は、取締役が適切な注意を怠った場合、会社のみならず個人も直接責任を負う可能性があることを示しています。 非財務リスク及び新たな義務 会社法180条に違反した最近の有名な判例には会社の非財務リスクの見落としを問う事案もありました。この傾向は今後も続くものと思われ、会社に取っての主要課題ESG (環境、社会、統治)、すなわち温室効果ガス排出量の開示、トランジション・マネジメント、サイバーセキュリティ・マネジメント、現代奴隷法に関する報告などの義務がますます増加するでしょう。 取締役は必然的に進化しつつある注意義務・善管注意義務を認識し、今後激化する非財務リスク分野の管理を強化する必要があります。 誠意及び正当な目的(s181) 取締役は会社法181条により誠意を持ち、正当な目的で会社の利益を求めるため職務を遂行する義務があります。「Sunnya事件」では取締役の行動が原因で、Sunnya社が輸入税支払いを免れるため、不正な請求書を発行してしまいました。裁判所はこの行動が181条違反だと判決を下しています。 裁判所はさらに結果的に不当な目的はなかったとしても、または不当な行為が会社の利益になるという意図があったとしても、違反は起きていただろうと決定づけています。なぜなら、違法な行いは決して会社の最善の選択ではないからです。これは取締役が純粋に会社の利益を信じて取った行動でも違反になるという例です。取締役の信念はまず合理的であるべきです。 地位の不正利用(s182) 取締役は会社法182条により自分のため、もしくは他人のため、自分の地位を不正に利用し、利益を得たり、会社に損害を与えることを禁じています。「Sunnya事件」ではMr He とMs Luが取締役に在任中、アンダーバリュー価格を採用したと判決を下しています。Sunnya社はNeurio という商品をGNT が第三者に転売することを考慮して、低い輸出価格で販売していました。 裁判所は上記のようなアンダーバリュー価格取引及び不正な商業送り状は182条違反に等しいと判断しました。特にアンダーバリュー価格取引はSunnya社を直ちに経済的不利な立場に立たせ、その利益を前取締役の家族の会社に転換した経緯から、明らかに182条違反だと決定されました。 取締役は違法行為もしくは私欲のために地位の不正利用をする場合は、再考する必要があります。  情報の誤使用(s183) 取締役もしくは他の役員がその立場で入手した情報を不正に使うことは183条で禁じられています。取締役は取締役を退いた後も、その立場を利用して入手した機密または繊細な情報を使用し、会社に損失を与えてはいけません。 最近の例では、西オーストラリア州控訴裁判所で2023年に下ったChaffey Services Pty Ltd v Doble (No 4) の183条違反に関する最高裁判所の判決が維持されました。当事件でMr Dobleは Chafco Pty Ltd に鉱山現場の保守監督として雇われていました。雇用期間中、Mr Doble は自分の地位を利用して得た極秘情報を使用し、彼が保持する会社、Kirahnley Pty Ltd への 早期資金調達を確実なものにしました。その後、鉱山現場の持ち主から鉱山の再生契約を獲得しました。裁判所は情報の不正利用により得た利益の返還を命じました。その際、極秘情報は本質的に損害賠償を受ける価値のあるものだと強調しました。 この事件は監督者に関することでしたが、法律で定められた条項は取締役にも同様に適用されます。 取締役の個人的負債 上記に示した通り、180条から183条までの義務を怠った取締役はその違反に対して個人的な負債を負います。補償命令及びもしくは制裁金の形が取られたり、取締役資格停止が命じられます。 より深刻な事件では181条から183条の違反が184条によって刑事事件に引き上げられます。取締役に最高刑、すなわち懲役15年が課されることもあり得ます。 取締役は一般的義務以外に、他の特定の責務にも留意しなければなりません。588条の破産取引を避ける義務、また会社が遅延なく納税することを確認する義務などがその例です。 取締役はオーストラリア国税局が発行する取締役罰金通知(DPN)にも注意を払う必要があります。会社が支払うべき税金の未納、例えば源泉徴収(PAYG)立替納税分、退職年金追徴金(SGC)、物品サービス税(GST)納税分などがあります。DPN を受け取ったら、取締役は通常21日以内に負担分の納税をする、破産管財人の任命をする、会社を解散する準備を始めるなどのしかるべき行動を取らなければいけません。さもなければ、最終的には個人で負債を負うことになります。 重要点 取締役はオーストラリア企業の統治と成功に中心的な役割を担う存在です。その責任は法的また実務的な責任で、情報に基づいた積極的な取り組みが求められます。会社を率いる特権と共に多くの責任が求められ、以下のような重要点に気を付けるべきです。 責務を理解すること:取締役は英米法における義務及び条例における義務、そしてその義務が意味することに精通していなければなりません。 常に情報を得ること:取締役は法律や規制の変化に敏感でいなければいけません。特にESG (環境、社会、統治)、気候変動リスク、サイバーセキュリティなどが挙げられます。 注意義務・善管注意義務の遵守:取締役は関連情報を検証し、疑問点を明らかにし、時に挑戦的な経営を実行し、情報に基づいた決断をする必要があります。常にリスク管理フレームワークを見直し、更新することは不可欠です。それが会社を潜在的危機から守ることにつながります。 健全な統治の維持:効果的な統治には明確な方針、利害の衝突への対処法、守秘義務の維持が求められます。また取締役会の決定は企業定款や方針に基づき、透明性を持って決定されなければいけません。  行動や決定を記録に残すこと:取締役会の内容、決定、その決定に至る根拠などに関する記録は広範囲に保管することが極めて重要です。記録の保管は取締役がその義務を遂行していることの証拠になり、後にもし会社の決定が精査されたとしても取締役を保護することになります。 必要時には専門的指導を受けること:複雑な法律、会計、運営危機などの問題に直面した際、取締役は迷わず、独立した組織からの専門的知識を求めるべきです。これが会社の決定を情報が確かで正当な決定へと導きます。 上記の手順を踏むことによって、取締役は法的義務を遵守しているだけでなく、それが会社の効果的な経営と長期にわたる持続可能性へとつながるのです。    


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小規模事業者再編制度(Small Business Restructuring)

小規模事業者再編制度(Small Business Restructuring) 2021年に導入された小規模事業者再編制度(Small Business Restructuring=SBR)は、オーストラリア全土の小規模事業者、特に近年の経済低迷の影響を受けた企業にとって、会社清算に代わる重要な選択肢となっています。 特にファミリービジネスを含む小規模企業の事業継続を支援するために設計されたSBRは、企業が営業を続けながら、法的に財務状況をリセットできる仕組みです。   事業継続のための法的手段 SBRは、債務超過に直面した小規模事業者が、従来の清算手続きによる会社閉鎖を回避できるように設けられました。 SBRを利用することで、該当企業は債権者に対して再編計画を提案し、会社法(Corporations Act)に基づき、債務の削減や免除を求めることが可能です。 このプロセスにより、企業は営業を継続しながら、法的に整理された形で財務問題に対処できます。   利用資格と手続き SBRを利用するには、総債務額が100万ドル以下であり、未払いの従業員賃金や年金(superannuation)は含まれていないことが条件になります。 SBRの実行には債権者の承認が必要です。債権者の投票権は貸している金額によって決まり、債務全体の51%以上を持つ債権者が最終決定権を持つことになります。   利用増加とその影響 ASICの最新データによると、SBRの申請件数は大幅に増加しており、昨年は約3,000件が債権者に提示されました。 この増加は、SBRの認知度向上と、多くの小規模事業者が厳しい経営環境に直面していることを反映しています。 特に飲食業界は大きな打撃を受けており、同業界の10社に1社が昨年清算されました。 多くの再編計画では、債務額が20万〜40万ドルの範囲で、債務の最大80%の免除を債権者に求めています。 SBRの約80%が承認されているのも注目すべき点です。   オーストラリア税務局(ATO)の役割 SBR案件の93%に関与しているオーストラリア税務局(ATO)は、最大の債権者(GST) として重要な役割を果たしています。 ATOはこれまでに約2,500件のSBR計画を承認しており、2024-25会計年度3月時点では、ATOが債権者となった再編計画の約80%に賛成票を投じています。 宿泊業および飲食業(カフェ、レストラン、テイクアウトサービスを含む)は、SBR全体の22%を占めています。 ATOの関与が大きいため、再編計画の可否はほとんどの場合、ATOの判断に左右されます。 ATOが再編計画に賛成すれば、他の小口債権者もその計画に組み込まれる形となります。   制度のセーフガードと除外規定 制度の健全性を保つため、過去7年以内に清算や再編に関与した取締役がいる企業は、SBRの申請資格がありません。  


商取引及び会社法

不公正な契約条項 ― 「曖昧」で「極端に一方的な」契約条項は無効となる場合があります。この様な契約を交わしていませんか?

「不公正な契約条項」とは? 「不公正」と見做された契約条項は、豪州の裁判所では強制力を持たない。契約条項が以下の定義を満たした場合、ASIC法または消費者保護法(Competition and Consumer Act 2010)(ACL)の基づき、「不公正」であると判断される: 1. その条項が、契約当事者間の権利および義務に、著しい不均衡を引き起こすこと; 2. その条項により利益を得る契約当事者の正当な利益を保護するために、合理的に必要ないこと; 3. その条項が適用された場合、当事者に経済的またはその他の損害・被害を与えることになること。 特筆すべきは、ACLはStandard Form Contracts(「標準型契約」)に含まれる不公正な契約条項から消費者および小規模な企業を保護する。「標準型契約」とは、交渉力の不均衡がある契約、交渉や修正の余地がほとんどないテンプレートに基づいている契約書、または「受け入れるか拒否するか」(take it or leave it)以外の選択肢がない状況で提示された契約書のことを指す。法律上、全ての契約書は「標準型契約」であるとみなされるため、もしも不公正な契約条項のクレームが生じた場合、契約書の作成者が「これは標準型契約ではない(だから不公正な契約条項の規制は受けない)」という証明責任を負う。   Auto & General事件 2023年4月4日、Australian Securities and Investments Commission (ASIC) (豪州証券投資委員会)は、Auto&General Insurance Company Limited(以下、Auto & General)に対し、消費者からの請求を不当に拒否出来るとされる契約条項の無効性について、連邦裁判所に提訴した。当該契約では、「顧客の家屋や家財に何か変化があった場合」、顧客はAuto & Generalに対し、その旨通知する義務を負わせていた。ASICは、この条項について以下のような見解を示した: • 保険契約者の家屋や家財に関し「何か」変化があった場合、Auto & Generalに通知する義務を顧客に課すことは、過剰な負担であり、尚且つ曖昧で非現実的である; • 保険契約者が通知を怠ったという理由だけでAuto & Generalが保険給付請求を拒否または減額できるといった権利は、Insurance Contracts Act 1984に規定されている拒否権よりはるかに広範である; • 保険契約者に対する実際の義務や権利について誤解を招く可能性がある。 したがって、ASICはAustralian Securities and Investments Commission Act 2001(ASIC法)(豪州証券投資委員会法)に基づき、この契約条項が不公正であると主張している。     不公正な契約条項規定に関する最近の法改正 Auto & General事件は、ACLおよびASIC法上の不公正な契約条項規定の範囲を大幅に拡大する最近の法改正に関連したものであり、政府が当規定の執行に焦点を当てていること(ひいては、企業が契約条項を見直す必要性)を示している。 注意すべき主な変更点は、不公正な契約条項禁止の違反に対するASIC法上の民事罰(罰金)の導入、およびACLにおいて規定される最大罰金額の大幅な引き上げである。当規定の違反に対し、今までは原則的に罰金が課されなかったため、ほとんど無力だったという問題の対応であった。これらの罰則は2023年11月10日より適用される。 主な法改正の概要は以下の通りである。 現在(法改正前) 法改正後 不公正な契約条項保護は、小規模企業契約に適用される。すなわち、一方の当事者企業の従業員数が20人未満であり、契約の前払い金が$300,000未満、または12か月を超える契約金が$1,000,000以下の場合に適用される。 ACL上、不公正な契約条項保護は、一方の当事者企業の従業員数が100人未満、または前年度の売上が$10,000,000以下である場合(前払い金額に関係なく)適用される。 ASIC法上、保護規定は前払い金が$5,000,000以下で、一方の当事者企業の従業員数が100人未満であるか、前年度の売上が$10,000,000以下の場合に適用される。 罰金はない。 法人の場合、罰金額は最大で、下記いずれかのうち最も大きい金額のものになりうる: • $50,000,000; • 不公正契約条項により得られたであろう利益額の3倍;または、 • 違反行為を行った期間中の売上高の30%。 個人の場合、最高額$2,500,000までの罰金が課せられる。 裁判所が標準型契約の条項が不公正であると判断した場合、その条項は自動的に無効となる。 当事者が損害を受けた、または受ける可能性が高い場合、裁判所は、契約の全体または一部を無効とすることができる。 裁判所は、次のような命令を下すことができる: ・実際の損失や損害がなくても、損失や損害が生じる可能性がある場合には、契約全体または一部を、無効化あるいは変更し、または執行を拒否すること。 ・規制当局の申し立てにより、過去に不公正と宣言された条項と同じ、または実質的に同じ効果がある条項が、今後の標準型契約の小規模企業契約または消費者契約に含まれないようにすること。 ・規制当局の申し立てにより、過去に不公正と宣言された条項と同じ、または実質的に同じ効果がある条項が損失や損害を与える可能性がある場合、その損害を防止または軽減すること。   法改正の影響 ASICの副委員長、サラ・コート氏は次のように述べている。 「契約条項は、当事者が現実的に遵守できるように、つり合いが取れ、透明でかつ明確である必要がある。契約に基づく当事者の実際の権利と責任が正確に記述されていなければならない。」 この、間もなく実施される不公正な契約条項禁止法の改正に鑑み、問題が生じないよう、現在使用している標準型契約書の専門家によるレビューをお勧めします。 ご質問等ございましたらH & H Lawyersまでお気軽にお問い合わせください。   免責事項:本書の内容は一般的なものであり、法的アドバイスを提供するものではありません。情報は外部の情報源から取得されたものであり、掲載日または将来における情報の正確性、また最新性を保証するものではありません。本書で取り上げた事項に関しては、別途ご自身の状況に即した法的アドバイスを得てください。


商取引及び会社法

迷惑メール禁止法 

Q:シドニーで清掃サービス会社を経営しています。先日、携帯電話に登録されているコンタクトリストを使って、自社の清掃サービスのプロモーションのメールを一斉送信したところ、「これは違法なスパムメールだ」という指摘を受けました。何か罰則があるのでしょうか?   A:スパムメールは、Spam Act 2003というオーストラリア連邦法により規制されています。 この法律はメールだけでなくSMS、MMS、LINEなど広範囲な「Commercial Electronic Message」に適用されます。 同法上の “Commercial” の定義は広く、下記を含みます。 1. 商品・サービス・土地・ビジネス・投資に関する、オファー・プロモーション・広告を目的とするもの。 2. 商品・サービス・ビジネス・投資を提供する業者に関する、広告・プロモーションを目的とするもの。 3. 他者をだますことで不当な利益を得ることを補助する目的のもの。 4. 従い、商品・サービス・土地・ビジネス・投資に関するほぼ全てのElectronic Messageがこの定義でカバーされると言っていいでしょう。数少ない例外として、例えば、商品購入の確認メールなどはこの定義には入らないと考えられます。   今回の相談の件は、上記の条件を満たす「Commercial Electronic Message」にあたり、Spam Actの対象になると判断します。 こうしたCommercial Electronic Messageにつき、Spam Actは以下の事項を義務付けています。 1. 受信者の承諾を得ずに、あるいは暗黙に承諾されていると妥当に考えられる状況でなければ、Commercial Electronic Messageを送ってはならない。 2. 送信者の情報(少なくとも名前あるいは会社名、ABN、連絡先)を記すこと。 3. 簡単に受信解除(Unsubscribe)できる方法を明確に記すこと。例えば、Unsubscribeのためのウェブサイトのリンク先を記載する等。 4. 受信者からの要請があれば、5日以内にUnsubscribeの処理をすること。   自分のコンタクトリストに登録されている人に無差別にコマーシャルメッセージを送信する場合、個々の受信者からの承諾を得るか、または、暗黙に承諾されていると妥当に考えられる状況でなければなりません。今回の相談の場合この点が満たされているかが問題です。また、Unsubscribeの方法を記さなくてはいけません。 Spam Actに違反すると、担当官庁であるThe Australian Communications and Media Authorityから是正勧告や少なからぬ額の罰金の支払い命令を受ける場合がありますので、こうしたメールの扱いには十分気を付ける必要があります。  


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オーストラリアで起業する

Q:友人と一緒に、カフェを始めようと思っています。気の合う友達同士なので、形式ばった契約書などは必要無いかと思ったのですが、別の知人からは「取り決めを、覚え書き程度にでも、書面で残しておいたほうがいいのでは?」と言われました。どういった書類が必要になるのでしょうか?   A:取り決めを書面化することは絶対に必要だと考えます。気の合う友達同士であればなおさらです。例えば、後にビジネスの経営方針につき重大な意見の相違が生じたり、利益の分配に関し合意が得られない場合等、その解決の拠り所となるルール(合意書)が存在しないと、問題の解決がいちじるしく困難になってしまいます。 さて、まずは「友人と一緒にカフェを始める」ということについて、明確にする必要があります。二人で、新規に会社を設立して、会社を通じてのカフェ経営となるのか?あるいは、二人がそれぞれ個人・連帯責任を負う“パートナーシップ”での経営となるのか?あるいは一人が経営者となり、もう一人は従業員という形にしても、「一緒にカフェをやる」ということは可能です。 もしも会社を設立するということであれば、二人はそれぞれ幾ら出資するのか?また、その出資は、“資本金”という形で出すのか、あるいは会社への“貸付”という形で出すのか?「お金を出す」にしても、これを資本金とするか会社への貸付とするかで、権利・リスクは大きく変わってきます。 資本金として出資するのであれば、その出資額に応じて株式が発行されます。通常、会社の総株式数の過半数を超える株主は、(役員の選任を通じ)会社の運営方針の最終決定権を握ることになります。 また、お互いの給料の額及び、カフェで利益が出た場合に、それをどう分配するのか?ということについても決めておくべきです。ただ「出資比率に応じて利益は分配する」という簡単な話ではなく、例えば未来に向けての設備投資のために、利益のうち幾らかは二人で分配せずにビジネス内部に留めておく必要もあるかと思います。なお、お互いの利益分配、幾らをビジネスの運営のためにキープするのか?という点については、往々にして争いの原因となります。 上記とは逆に、もしもカフェの運営が上手くいかず、例えば追加で資金注入が必要となった際の、お互いの責任・義務についても、出資形態や運営形態を決める上で考慮しなくてはいけない点です。 複数で事業を行う個々の形態にはそれぞれの長所・短所があります。あなたたちにとって一番適した形態を選ぶためには弁護士や、会計士にアドバイスも求め、二人でよく相談するところから始めてはいかがでしょうか。  


商取引及び会社法

オフィス器具の不具合

Q:9か月前に$25,000を投じ、オフィス用に最新のコピー機兼プリンターを購入しました。あまり名の通った会社の製品ではありませんが、その機能に比べ結構安かったので購入することに決めました。購入当初から機械の調子が悪く、何度か修理に来てもらったのですが、すぐにまた故障してしまい困っています。また、業者からは「私たちは中国の会社から製品を輸入しているだけだから、これ以上問題があるのなら中国の製造業者に直接クレームしてくれ」ともいわれました。最近では修理の要請依頼も無視されてしまっています。知り合いに相談したところ、事務所で使用するコピー機等は業務用であるため、消費者保護法上の保護は受けられないと聞きました。本当でしょうか?   A:相談者の知り合いからのアドバイスは間違っています。また販売店からの「中国の製造業者に対してクレームしてくれ」というのも、適切ではありません。今回の件に関しては、十分オーストラリア消費者保護法(Australian Consumer Law、略して「ACL」)によって定められている消費者保証にしたがって販売会社にクレームすることが可能です。 ACL上の消費者保証の対象者は「$40,000未満の製品を購入した者」と定められています。つまり、その製品の使用目的が、個人消費または、家庭内で使われるような性質の製品でなくとも、$40,000未満であれば消費者保証の対象となります。(注:今回の記事を書いている2020年8月現在では、ACLの“消費者”の定義の金額上限は$40,000ですが、2021年の7月1日からはこの上限額が$100,000に引き上げられることが予定されています。) しかし、例外として「製品の購入が卸売や転売目的であった場合」または「商業目的で、その製品を何か別のものに作り替える、或いはその製品を他の物の修理に使用する場合」が定められています。今回はこの例外には当たらないと思われます。また、消費者がその購入した製品の不具合に関し、その都度海外の製造業者にクレームするという事は、消費者に対し、非現実的な負担を与えることになり、事実上クレームが出来ないことになってしまいます。この点をカバーするため、ACL上今回の販売店のような輸入業者を「あたかも製造業者」とみなしALC上の義務を負わせています。したがって、商品を販売する輸入業者はこの点の留意が必要です。 今回の相談者には、購入されたコピー機の不良の度合いによって販売会社に対し、返品、返金、無償修理を求める権利が生じるものと考えます。Fair Trading NSWや、Australian Competition and Consumer Commission等の政府機関の相談窓口を通じてクレームすると良いと思います。