コラム
MORE >
家族法
オーストラリアでは平均9日間に1人の女性が、1か月に1人の男性がDVにより殺害されており、特に移民コミュニティーの中では深刻な問題になっています。移民している方々、特に条件付きパートナービザで滞在している方々は、ビザの心配、英語が話せない、政府からのサポートが受けられることを知らない、家族がいない、出て行く先/資金がない等の理由でDVの被害を受けている人の割合が高いと言われています。DVは暴力だけではなく、精神的・金銭的虐待も含みます。 連邦政府/各州には複数のDV被害者のための相談所があります。連絡先は以下のリンクからアクセスできます。 Support Services: respect.gov.au 英語が話せなくても通訳のサポートも受けらますし、DVから逃れるための短期/中期的宿泊施設を紹介してくれる機関もあります。子供と一緒に滞在できる施設もあります。社会福祉士/心理カウンセラー等の有資格者が親身になって相談にのってくれ、相談者の状況によって受けられるサービスに関してアドバイスしてくれます。本人の意思に反したことをさせられることはありません。取り敢えず受けられるサービスに関する情報収集しておくことで、いざとなった時に行動を起こす勇気が出せるかもしれません。
家族法
Q:この間、妻と離婚の合意をしました。オーストラリアで離婚をするためには、原則的に12か月以上に渡り別居していることが必要だと聞き、寝室を別にするのはもちろんのこと、居間に間仕切りを入れて二つにしたり、キッチンの利用時間を割り当てたりしましたが、ストレスがひどく、どうにかして相手に家から出て行ってもらうことはできませんか? A:そうした状況であれば、恐らく相手のほうも早く出ていきたいと考えているのでしょうが、レントの金銭的負担が重い場合、すぐに出ていくという決断が難しいだろうと思います。 これが純粋に不動産法の問題であれば、不動産の名義人が誰であるか、大家とリース契約を結んでいるのが誰であるかによって、誰がその家に残り誰が出ていくべきかという判断は簡単につきます。しかし家族法の問題としては、名義人やリース契約の当事者が誰であるかは決定的な要素ではありません。 家庭法の問題として合法的に(元)パートナーを家から退去させるためには、裁判所から退去命令を得る必要があります。ただし裁判所からFamily Law上の退去命令を出してもらうためのハードルは高く、例えばDVなどで一方の当事者の身に危険がある場合などでなければ強制退去は難しいというのが現実です。なお、DVが伴うケースであれば、Family LawではなくCriminal Lawの問題として、警察などを通じてDomestic Violence Orderにより、DVの加害者を家から強制的に退去させるという事は比較的速やかに行うことが出来ます。 持ち家であれば、それは婚姻財産分配の対象となり、一方が退去しても、家の権利あるいは家を売却してその売却益の分配を受ける権利には影響しませんので、そのような険悪な状態を続けていくよりは、お互い話し合って、どちらが退去するか決めてはいかがでしょうか?もし話し合いが決裂した場合には、自ら家を出て婚姻財産分配のための交渉・手続きを開始してしまうというのも選択肢の一つです。元パートナーが家に残って家賃の負担なく住み続けるという状況であれば、明らかに不公平ですから、退去に当たり例えばその期間のホームローン返済は元パートナーが行うなどの条件をつけてはいかがですか?これらの負担分をすべて考慮に入れ、最終的にフェアな婚姻財産分配になるよう話し合いを行っていく事になります。
家族法
Q: 半年前から、15年連れ添った専業主婦の妻と離婚を前提とした別居中です。先般妻より婚姻財産の分配について打診がありました。共同名義のマンションや、私のスーパーアニュエーション、銀行預金等を分けるのは納得できますが、私が相続した遺産も婚姻財産として分けなければいけないのでしょうか?というのも、結婚して3か月後に私の祖母が亡くなり、約$15万ドルを相続し2年後に共同名義のマンションの購入資金にあてました。ちなみにマンションの購入価格は約50万ドルで、現在は120万ドルの価値があります。また、昨年私の父が他界し父親名義の東京にある約4,000万円のマンションを相続する事になりました。 A:離婚の際に一方が相続した遺産を分配対象の婚姻財産として分けなければならないかは、相続した時期、婚姻期間、婚姻財産に対する相続した遺産の割合等が考慮されます。すなわち、相続した遺産とは言え状況によっては分配対象の婚姻財産となってしまうという事です。相談者のケースでは、約15年前に相続した祖母の遺産は、既に共同名義のマンション購入代金として充当されていて、かつそのマンションの価値が相当上がっているとすれば、婚姻財産として分配対象となる可能性が高いです。その理由として、相続した時点からかなり時間が経っている事、今のマンションの価格に対する遺産の額が比較的少ないこと、専業主婦として奥様は今のマンションの価値を上げるために貢献したとみなされる事等が考えられるからです。無論、相続した額が15万ドルではなくその10倍の150万ドルであったような場合には違った結果になり得ます。他方、昨年お亡くなりになったお父様名義のマンションについては、相続した時期が別居後であり、比較的最近のことですので、相続対象となる婚姻財産とは見做されない可能性が高いです。相談者の場合には15年前とつい最近の相続という事で、相続時期の違いにより、これが分配対象の婚姻財産かどうかの判断が比較的容易にできますが、例えば相続時期が10年前であっても、その資金が相続人名義の別口座で運用されていた場合等にはこの判断が難しくなります。分配につきお互い同意できなければ、最終的には裁判所が全体の事実関係を考慮し、遺産が婚姻財産として分配対象となるか否かを判断する事になります。
家族法
Q:オーストラリアに居住して20年近くになります。夫と別居して5年になり、連絡もほとんど取っていません。もう、夫婦としての関係は破綻したと思っており、離婚と婚姻財産分配の手続きを始めようかどうか悩んでいたところ、先日、夫から「末期の癌が見つかって、医者から余命1か月だと宣告された」との知らせがありました。夫の遺言書の内容は知らされていませんが、私に全てを遺すような遺言書を書いているとは思えません。もし彼が亡くなってしまった場合、私の婚姻財産に対する権利はどうなるのでしょうか?また、私にも遺産を受け取る権利はあるのでしょうか? A:オーストラリアにおける離婚及び婚姻財産の分配については、Family Law Actという法律が適用されます。同法第79(8)条により、婚姻財産に関する裁判が開始されていれば、どちらかがその途中で死亡しても、遺言執行人または遺産管理人を故人の代理人として裁判を継続することができます。重要なのは、訴訟は配偶者が存命中に開始されなければいけないということです。もしご主人が亡くなる前に裁判が開始されていなければ、配偶者の婚姻財産分配の請求権は消滅していまいます。従って、もしもあなたが婚姻財産分配という方法を選択するのであれば、早急に訴訟を始める必要があります。 もしご主人が亡くなる前に婚姻財産分配の裁判が始められなかった場合には、あなたの権利は、遺産の相続人としての権利となってしまいます。この点、もしご主人があなたに財産を全く遺さない、または不十分な遺産だけを遺すような遺言書を書いたとしても、配偶者であるあなたには、Family Provision(日本の遺留分請求に似た制度)を求める権利があり、遺産の一部を取得できる可能性はあります。Family Provision上、あなたにはどのくらいの権利があるのか、または無いのかは、裁判所があなたの状況等、遺産に関する様々なことがらを考慮し、自由裁量により判断します。特に重要となるのは、あなたがご主人の扶養家族として自身の生活をご主人に頼ってきたかどうかという点です。 これに対し、婚姻財産分配を求めるという方法では、家庭裁判所は主に「分配対象となる婚姻財産を取得するために、夫婦それぞれがどれだけ貢献したか」という、過去の婚姻期間中の状況の分析に重きをおいて、財産の分配額の判断をします。ちなみに、専業主婦による子育てや家事等の家庭への貢献も当然考慮されます。
家族法
Q: 夫と協議離婚をすることになりました。子供はいないのですが、飼い犬がいます。この子が私にとっても夫にとっても子供みたいなもので、双方、この犬の権利をめぐって争いになっています。離婚時のペットの扱いは、法律上どうなっているのでしょうか? A: 近年、ペット(特に犬・猫)の多くは、家族の一員のように暮らしていて、多くの離婚において、誰がペットの所有者となるべきか、裁判所で争われるケースがあります。 離婚、婚姻財産の分配等に関するオーストラリアのFamily Law Act 1975 (Cth)には、離婚をしようとしている夫婦が飼っているペットに関する直接の言及はありませんが、これまでの判例で、家庭裁判所は「ペットも個人財産である」との判断を下しています。ペットも個人財産であるため、家庭裁判所は、同法第79条により、ペットを離婚当事者の財産の一部として考え、その所有権は誰にあるのかについて命令を下すことができます。 では、ペットはどれくらいの価値があるのかというと、一般的には、愛玩を目的として飼育されるわけですから、金銭的な価値はないものと考えられています。しかし、優良な血統などの理由により、金銭的価値があるペットに関しては、婚姻財産の一部として他の財産と同じように扱われるケースもあります。ペットの所有権をめぐって当事者間で争いがある場合には、家庭裁判所は、他の財産と同じように、各当事者の言い分を考慮し、その判断をします。 次のような状況は、ペットの所有権はあなたにあると主張するために有利となります。 例えば、 Local councilにおけるペットの登録に関して、あなたが所有者として登録されていること あなたの情報が、ペットに埋め込まれているマイクロチップに登録されていること あなたが常時ペットを獣医に連れていっていることを証明するためのレシート等があること ペットをトレーニングスクール等に連れていっていること 離婚後も十分ペットを飼える住居に住んでいること(特にそのペットが大型犬の様な場合にはなおさら広い庭付きの家等に住めることが重要となります) 頻繁に餌やりや散歩に連れて行くなどして、ペットがあなたを一番の飼い主として認識していること などです。 いずれにせよ、ペットの所有権については、裁判ではなく、調停や交渉などの方法で決定することが望ましいでしょう。大切なことは、子供の親権争いの時と同様に、ペットの場合でも、大切な事はそのペットにとって、どういう判断が最も幸福をもたらすかということではないでしょうか?
家族法
離婚は人生の中で最も苦悩をもたらす出来事の一つです。そのため、離婚争議中に感情的になり、相手に対するフラストレーション・怒りをFacebook等のソーシャルメディア上で解消する行為に出てしまい、後に後悔する結果になるケースが残念ながら多々あります。 近年では離婚裁判、特に親権が関わるケースにおいて、Instagram、Facebook、Twitter等のソーシャルメディアにポストされた内容が、親としての人格を問われる事実を証明する証拠として使用されるケースが増えています。ソーシャルメディアが証拠として使用され、裁判の結果にネガティブな影響を与えないよう、以下の点、注意する必要があります。 相手に対する礼儀を欠いたコメント、相手を軽蔑するようなコメントは親としての責任に欠ける態度として受け取られるので、控えること。(Email / SMSにおいても控えること。) 飲み会で泥酔した際に起こした愚行等、人格を疑われるような行為、自分の評判を傷つける可能性のあるような状況において、自分の写真を他人にとられないよう気を付けること。 泥酔した際に起こした愚行等、親としての当事者の人格にネガティブなイメージを与える可能性のあるポストはしないこと。 一度ポストしてしまうと、後で削除しても既にそのポストのスクリーンショットを取られてしまっている可能性があるので、要注意。ポストする前に再度よくその内容がどう影響するか考えること。感情的になっているときにポストしないこと。 自分がポストしたコメントを子供に読まれた場合、それが子供に同のような影響を与えるかを常に考え、悪影響を与えそうなポストはしないこと。 日常的な出来事を過剰にシェアーしないこと。 家庭裁判に関わっていることをソーシャルメディア上で開示しないこと。家庭法第121条違反とみなされる可能性あり。 以下は上記に関する判例です。 父親が母親との合意なしに子供達を連れ去ったあとに、母親のもとに残った10歳の息子に、「おまえを無能な母親から引き離したい」 というSMSをおくった。数年後同父親はFacebookにも、自分が子供を誘拐したことに関する裁判が始まることをWhat a ***** joke! というコメントと共にポストし、他にも母親の名誉を傷つける様々なコメントをポストした。これらは後の裁判において、子供達がFacebookにアクセスしこれらコメントを読む可能性があること、及び、このようなコメントが子供たちに与える影響を父親が全く理解していないことを証明することに使用された。 父親が、「自分の娘に会いに行っただけで刑務所行き。最悪な家庭裁判のシステム!」というコメントを含め裁判に関するさまざまな批判をFacebookにポストした。これが後に親としての責任感に欠ける父親の態度を証明する証拠として使用された。 子供たちが、母親との監視付き面会中に写真をとられるのを嫌がり、動揺していたにもかかわらず、母親は写真をとりそれをFacebookにのせた。後の裁判において、これが子供たちの置かれている状況を母親が全く理解していないことの証拠として使用され、他のFacebookのポストも母親が薬物を使用していることの証明として使用された。