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Family Law Actがより簡潔で公平なものとなるよう、2025年5月29日よりFamily Law Actが以下の通り改正されます。 DVの経済的影響に関する認識DV(ドメスティック・バイオレンス)により身体的・精神的な傷害を負った被害者や生存者は、労働能力の低下、子どもの養育や家事の管理の困難さなど、生活全般にわたる影響を受ける可能性があります。これにより、結婚(事実婚を含む)における財産への貢献能力にも重大な影響を及ぼすことが認識され、財産分与において現在および将来の状況を評価する際の重要な要素として考慮されることが定められました。また、DVの定義が拡大され、「Financial Abuse(経済的・金銭的虐待)」もDVに含まれるようになります。 財産分与におけるペットの扱い裁判所は、財産分与の際にペットの所有権を決定するにあたり、DVを含むさまざまな要因を考慮することが義務付けられます。これは、ペットを虐待したり、取り上げたりすることで相手を支配・コントロールしようとするケースが多発しているためです。この改正により、家族におけるペットの重要性が正式に認識されることとなります。 CCS(子どもとのコンタクトサービス)に関する規制枠組みの確立CCSプロバイダー(子どもとの面会を監督するサービス提供者)に対し、認定要件が導入されます。これにより、「Supervised Contact Service(監督付き面会交流)」の場において、子どもの安全と福祉が確保されるための基準が明確に設定されます。 機密情報の保護強化カウンセリング記録や健康関連の書類など、被害者の個人情報が家庭裁判の手続きにおいてより厳格に保護されるようになります。これは、加害者がこれらの情報を悪用し、さらなる虐待を加える可能性があるため、被害者を守る上で不可欠な措置として認識されました。 婚姻財産分割手続きの明文化婚姻財産を分割する際の裁判所の手続きを明確化し、特に「Self-represented party(弁護士をつけずに裁判に臨む当事者)」にとって、より簡単で理解しやすい制度となるよう整備が進められます。
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Q:彼の浮気が原因で婚約を破棄する事にしました。元婚約者からは「婚約指輪を返せ」と言われています。返さなければいけませんか? A:婚約を破棄するという行為は「結婚する約束」を破る事になりますが、オーストラリアではMarriage Actにより、婚約破棄に起因する社会的・経済的損失に関連する損害賠償を請求する事は出来ません。ただし、これには婚約指輪等、結婚を前提とした贈り物は含まれません。婚約指輪を返す必要があるかは、その状況によります。まず、婚約はしたが同居していないカップル、またはDe factoとしての要件を満たしていないカップルの場合には、一般論として次のような原則が適用されます。①結婚を前提に指輪を贈られた女性が、贈られた条件の履行を拒否した場合、指輪を返還しなければならない。②男性が結婚の約束の履行を拒否した場合、法的な正当性がなければ、指輪の返還を要求することはできない。③婚約が双方の合意によって解消された場合、合意がない限り、婚約指輪など結婚を前提とした贈り物は、それぞれ相手に返還しなければならない。④男性側に暴力や浮気などの行為があった場合、女性は結婚の約束を拒否する「法的正当性」を主張することができ、婚約指輪などを返さなくても良い可能性がある。 次に、De factoの関係にあったカップルが婚約を解消し別れた場合には、婚約指輪等の返還はFamily Law Actの適用を受け、婚姻財産として分配対象の一部となります。つまり、誰が婚約指輪を所有できるか判断するには、次の要素が考慮されます。①婚約指輪の価値及び全婚姻財産の価値;②同居年数;③婚姻財産構築に関するお互いの金銭的・非金銭的な貢献度;④別れた後のお互いの将来的/経済的なニーズ。婚姻財産分配における指輪の価値は購入価格ではなく一般的にそれより低い市場価格になります。従い、婚約指輪がよほど高価なものでない限り、それは、お互いの個人的所有物として、分配対象の婚姻財産から外される場合が多くあります。 また、婚約のお祝いとして、元婚約者の親からプレゼントされた指輪は結婚を条件とした「Conditional Gift」であり、婚約解消に伴い、その返還を求められる事は十分考えられ、返還しなければならない可能性があります。 よって、相談者からはより詳しい背景を聞く必要があります。
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Q: オーストラリアで結婚して11年になります。現在、妻と離婚を前提とした婚姻財産の分配について話し合いをしています。結婚して2年後に、現在住んでいるアパートを購入する際、妻の父より20万ドル近く購入資金の援助を受けました。今になって義父がその元本及び利子の支払いを請求して来ました。3年前に義父の会社が資金難に陥った時、銀行からの借り入れの担保のため、私は義父と連帯して個人保証人になりました。その保証で今回の20万ドルを帳消しに出来ないでしょうか?また、離婚が決まっている今、妻一家とは今後一切かかわりを持ちたくないので、個人保証は取り消してもらう事は可能ですか? A: お義父様は9年前に行った約20万ドルの資金援助は、貸付金であったと主張されているのだと思います。その主張の根拠となる証拠、例えば契約書や合意書、場合によっては貸付を裏付ける手紙やメールのやり取りはありますか?ある場合には、その内容を確認する必要があります。そのような証拠がない場合には、相談者はどのような意図でその援助を受けたのかが重要になります。 もし資金援助がお義父様からの贈与であった場合には、返済する義務はありませんが、資金援助が贈与であったという事を立証しなければなりません。例えば、その当時のお義父様とのやり取りにおいて、「この資金は返す必要はないから、自由に使ってくれ」等といったものが残っていれば、贈与を立証する上で有利です。他方、あなたからお義父様に対し、「資金援助有難うございました。将来必ずお返しします」等というようなやり取りがあれば、資金援助は貸付金であったという色彩が強くなります。また、資金援助を受けてから今まで金利など一切お義父様に支払っておらず、また、お義父様から何ら金利払いや元本返済の催促がなかったとすれば、資金援助は贈与であった可能性が高くなります。従い、お義父様からの資金援助が貸付または贈与であったかは、それら証拠となる事実関係を吟味する必要があります。 個人保証の問題は資金援助とは別々に考えるべきです。相談者が個人保証をしている相手は銀行なので、たとえお義父様が帳消しにするといったところで、あなたの保証人としての銀行に対する責任は消えません。個人保証から解除されるためには、その個人保証書を確認する必要がありますが、銀行が扱う一般的なものであれば、おそらく銀行の同意なく個人保証を外すことは出来ないと思います。通常、銀行は個人保証を外しても、十分な貸付金に対する担保が存在しない限り、同意しないでしょう。従い、銀行に事情を説明し、個人保証解除の打診をする事をお勧めします。
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Q: 現在、夫と離婚協議中です。婚姻財産の分配についてはある程度話が付いていますが、14歳長男、8歳次男、4歳長女の養育についてもめています。 子供たちは私と一緒に住んで、合意した時間帯に夫に会わせるのが良いと思っているのですが、長男は頑として父親と住みたいと言っています。長男に影響されてか、次男も父親と住みたいと言いだし、長女は「お兄ちゃんたちと一緒に住みたい」と言っています。フルタイムで仕事をしている夫がちゃんと子供たちの面倒を見られるわけがないと思っていますが、夫は実家の協力があれば出来ると言っています。もしこの点が合意できず、裁判となってしまった場合、子供たちの意見は重要となるのでしょうか? A:離婚後の子供の養育(誰と住むかも含む)に関しては、オーストラリアのFamily Law Courtは、「何が子供にとって一番良いのか」を基準に、あらゆる状況・事実関係を考慮し、判断します。その中で、子供自身の要望も重要事項として考慮されます。裁判所はその子供の要望の妥当性を判断する上で、その子の成熟度、感情的及び知的能力、その要望の理由、各親との関係等を考慮します。片方の親が必要に応じ養育について、子供の意見を考慮するよう裁判所にリクエストする事は出来ます。その場合、通常、法廷の様な圧迫感のある環境で直接意見を述べさせるのではなく、裁判所はカウンセラーや、サイコロジストの様な第三者を任命し、子供の意見に関するレポートを提出させるという形がとられます。一般的には14歳の長男の要望は重要視されると思いますが、4歳の長女の要望については、あまり重視されないでしょう。8歳の次男については、ボーダーラインだと思います。ただし子供たちの意見の重要性は本人の年齢ではなく、実際の成熟度に委ねられます。最近裁判所は年少の子供達の意見も取り入れる傾向にあります。子供たちの意見の中で特に重要視されるのは、子供たちがなぜ父親と一緒に住みたいかという点です。長期的に安定した子供たちにとって最も良い養育環境を考えた場合、次男と長女の父親と住みたいという理由が「お兄ちゃんと一緒にいたい」というのであれば、あまり重要視されないでしょう。他方、長男の父親と一緒に住みたいという理由が、例えば「お母さんは精神的に不安定で、しょっちゅう子供たちに八つ当たりする」や、「全然弟と妹の面倒をみてくれず、食事もまともに作ってくれない」等であれば、かなり重要視されるでしょう。ただし、裁判所は子供たちの意見だけを取り入れるという事ではありません。責任者になろうという親が、子供達のニーズに応えられる能力(時間、経済力、環境等)があるのかも含め、長期的に安定した子供にとって最も良い環境で養育できるかが総合的に判断されます。
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Q: 私は結婚して約30年になります(NSW州在住)。その間専業主婦として家庭を守り、二人の子供達を育ててきました。子供達はすでに家を出て独立しています。最近夫との仲がぎくしゃくするようになりました。特に私が友人と出かけたり、好きな趣味に没頭しているのが気に食わないようで、夫は絶えず不機嫌で口もきいてくれない状況です。今最も困っているのは、今まで自由にデビットカードを使えていたのが、夫が急にそれを使えなくしてしまった事です。生活費は毎週現金で最低額を手渡されます。それだけでは私は何も出来ません。夫には何度も今まで通りデビットカードを使えるようにして欲しいと頼んでみても、「俺はお前が好き勝手するために働いているわけじゃない!」と怒って全く取り合ってくれません。これはDVじゃないですか? A:現時点ではご主人の行為はNSW州ではDVとはなりません。ただし来年2月1日からは他州と同様にDVとして扱われ、そのような行為はれっきとした犯罪となります。これまでNSW州では、暴力を伴わない精神的虐待・金銭的虐待はDVとして認められていませんでした。最近の法改制により他の州と同様に来年2月1日から、現パートナー、又は、元パートナーに対するCoercive ControlもDVとして扱われるようになりました。 Coercive Control とは暴力を伴わず、精神的/経済的・金銭的虐待を継続的に行うことにより、常に相手を自分の監視/管理下におき、束縛しようとする行為の事です。 例として以下が挙げられています。 • 相手、又は、相手の扶養者が加害者に経済的に頼っている状況下において、生活に必要な資金を与えないこと • 相手の求職・就職・職の維持を不当に妨害・制限・管理しようとする行為 相手の収入や資産にアクセスする行為・これらを管理する行為(共同名義の資産を含む)や、「Coercive Controlをするぞ」と脅す行為もDVとみなされます。 現時点で相談者の置かれている状況を打開するためには、Family Law等の案件として煩雑な裁判の手続きが伴い、迅速に解決するのは難しいと思われます。ただし、Coercive Controlが実際のDVに発展する可能性が高い事から、現時点でも警察は親身に話を聞いてくれると思います。同じようにDV被害者の相談を受けてくれるNSW Domestic Violence Line – 1800 656 463等に連絡するのも良いと思います。
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オーストラリアでは平均9日間に1人の女性が、1か月に1人の男性がDVにより殺害されており、特に移民コミュニティーの中では深刻な問題になっています。移民している方々、特に条件付きパートナービザで滞在している方々は、ビザの心配、英語が話せない、政府からのサポートが受けられることを知らない、家族がいない、出て行く先/資金がない等の理由でDVの被害を受けている人の割合が高いと言われています。DVは暴力だけではなく、精神的・金銭的虐待も含みます。 連邦政府/各州には複数のDV被害者のための相談所があります。連絡先は以下のリンクからアクセスできます。 Support Services: respect.gov.au 英語が話せなくても通訳のサポートも受けらますし、DVから逃れるための短期/中期的宿泊施設を紹介してくれる機関もあります。子供と一緒に滞在できる施設もあります。社会福祉士/心理カウンセラー等の有資格者が親身になって相談にのってくれ、相談者の状況によって受けられるサービスに関してアドバイスしてくれます。本人の意思に反したことをさせられることはありません。取り敢えず受けられるサービスに関する情報収集しておくことで、いざとなった時に行動を起こす勇気が出せるかもしれません。