コラム
MORE >
紛争解決・訴訟
Q:陪審員(Jury)として裁判に出席を求める召喚状が届き戸惑っています。仕事が忙しいので断ることは出来るでしょうか?また、断れなかった場合陪審員として何を求められ、何日間くらい拘束されるのでしょうか。 A:オーストラリアでは民事裁判で陪審員制度が使われる事はごく稀で、通常、陪審制度の適用は重大な刑事事件に限定されています。 まず陪審員の候補者はオーストラリア国籍で投票権のある人に限られ、その中からコンピューターでランダムに選ばれます。陪審員として裁判に出席(Jury Service)するのは国民の義務ですので、正当な理由なしに断ることは出来ません。この点重要なのは、適切な英語力が無い人は、陪審員になる資格がありません。これに加え、政治家、弁護士、警察官も陪審員にはなれません。妊婦、70歳以上の高齢者、現役の医者、歯医者、薬剤師はJury Serviceから免除されています。もし上記の職種(または理由)に当てはまるのであれば、送られてきた用紙に陪審員として出席できない理由を記入し、証拠(証明書など)をつけて返送してください。上記の条件を満たせない場合でも、健康上の問題や、陪審員を拒否できる他の正当な理由がある人は、その旨を記入した用紙と共に証拠を返送すれば、免除される場合があります。ちなみに「仕事が忙しい」は正当な理由にはなりません。その時点で免除されなくても、召喚日に裁判所に赴き裁判官に理由を説明し免除を求める事も出来ます。免除されなかった場合にはJury Serviceを全うしなければなりません。なお、当日裁判所に赴いても、実際に特定の裁判で陪審員として選ばれるか否かはその裁判を担当する弁護側または検察側の判断に委ねられます。 陪審員として選ばれた場合、何日くらい拘束されるかはその裁判によります。何か月にも及ぶ場合もありますし、当日被告が罪を認めてしまえば、陪審員の義務はそこで終了してしまいます。 陪審員制度は一般国民が裁判のプロセスに参加するという、いわば民主主義的な司法システムで、多くの国で採用されています。恐らくテレビや映画で陪審員制度がどういうものか、多くの人が既にご存知の事だと思います。実際に陪審員として選ばれれば、裁判官により、12人の陪審員として何をすることが求められているのか、何をしてはいけないのか等の説明がされます。陪審員には、例えば、裁判で提出された証拠に基づき被告には「殺意があったか否か」等の事実関係の判断のみが求められ、法律の解釈や適用等の判断は求められません。
紛争解決・訴訟
Q:ワーキングホリデーでシドニーに住んでいます。この数週間、環境や言葉の違いからくるストレスで鬱々とした日々を送っていました。先日買い物をしようとしたら、言葉がうまく通じず、むしゃくしゃして店員の胸ぐらをつかんで怒鳴ってしまいました。警官に押さえつけられた事や救急車に乗せられた事は覚えていますが、それ以外は意識が朦朧として何があったのかよく覚えていません。気が付くと、今いる病室に軟禁されていました。私はどうなってしまうのでしょうか。 A:それはMental Health Act(NSW)という法律に基づく、強制入院のケースだと思われます。 例えば暴行事件の疑いがあると判断された場合、通常警察はその被疑者を逮捕し連行します。しかしながら、被疑者に精神疾患が疑われるような場合、警察はMental Health Actに基づき強制入院の手続きに進むことがあります。なぜならば、刑法上、精神障害の度合いによってはその人はその行動に対し、刑事責任を問われない場合があるからです。このMental Health Actの主旨は、精神疾患を患っている人の人権を尊重しつつ、必要に応じ保護し、社会秩序を守るというものです。 一般的な流れとして、強制入院後、被疑者には二名の医師が割り当てられます。それらの医師の両方が「この患者は引き続き入院が必要」と判断すると、入院から2週間以内に、Mental Health Review Tribunalという裁決機関での手続きに移ります。一回目のTribunalのヒアリングでは「合法的に強制入院の手続きが行われた」かを確認し、医師等からの診断を基に、患者の入院の継続あるいは退院の判断がされます。退院となった場合、刑事事件につき訴追されるか否かは警察の判断に委ねられます。もし初回のTribunal ヒアリングで入院継続という判断がされた場合には、次は(通常)3名の審査官により再度、Tribunalヒアリングが行われ、退院か、あるいは最大3か月の入院延長の判断がされます。このTribunalヒアリングでは、本人にも弁護人が付く事になります。ちなみに弁護士を私的に任命できない場合にはリーガルエイドという国選弁護士をつけることも可能である場合があります。 保護者、例えば親などが近くにいれば、早期の退院が認められるケースは多いのですが、ワーキングホリデーや学生ビザ等、日本の家族から離れてシドニーで一人暮らしの方で、かつ、「こんなことを家族には知られたくない」というケースでは、保護者が不在ということで退院が遅れてしまうことも考えられます。
紛争解決・訴訟
Q:2年ほど前に、知人に10,000ドルを貸しました。期限12ヶ月、利息5%という条件を記した簡単な借用書も英語で作成し双方で署名しています。しかし期限が過ぎて、何度も催促したにもかかわらず、金利も元本も全く返してくれません。法的手段に訴えようかと考えたのですが、裁判となるとその費用が心配です。あまり費用をかけずに裁判をする方法はないでしょうか。 A:紛争の対象となっている額が比較的少額である場合、弁護士に依頼して裁判をすると、弁護士費用が相対的に高額になってしまい、勝訴しても結局、自分の懐にはあまりお金は入ってこないという結果になるケースがあります。 裁判で敗訴した側は勝訴した側の裁判費用の一部を支払うよう、裁判所により命じられることもありますが、その場合、相手から回収できる金額は実際にかかった裁判費用の一部だけにとどまるのが一般的です。従い、今回のような場合、弁護士に依頼することなくご自分で裁判を起こすことを考えてみてはいかがでしょうか? このような少額の訴訟案件($20,000以下の係争)を処理するために、裁判所(Local Court)には、Small Claims Divisionという部署が存在します。ここでの訴訟手続きは一般的な裁判所手続きに比べて簡易なものとなっており、弁護士に依頼することなく原告自身で進めることも比較的容易です。 訴状(Statement of Claim)の作成、裁判所への提出、そしてその送達(Service)の方法などは、政府系のウェブサイト(LawAccess NSWなど)で、法律の専門的な知識が無い一般人にもわかりやすく説明されていますので、まずはそこから調べてみると良いでしょう。 実際にSmall Claims Divisionでの訴訟手続きが開始されても、すぐさま裁判になるわけではありません。裁判の前にPre-trial Managementという、裁判所職員を間に入れて簡単な調停手続きがあるのもSmall Claims Divisionの特徴です。裁判に発展せずに、Pre-trial Managementで争いが解決するケースも多々あります。 Small Claims Divisionの裁判の進行は通常の裁判よりも一般人にわかりやすいように裁判官が話してくれる傾向があります。 ただし、Small Claims Divisionの手続きは「他の裁判所での手続きと比べれば、まだ簡単なほう」なのであって、今までに裁判の経験が全く無い方々にとってはハードルが高いかもしれません。まずは弁護士に相談して、Small Claims Divisionで自分で訴訟をするつもりである旨を伝え、最低限のアドバイスを求めたほうが良いかも知れません。また、裁判は被告にとっても相当な負担となりますので、訴訟を開始する前に、借り手に法的手続きに入る意志をしっかり伝え、出来るだけ裁判の前に、借り手と和解するのが好ましいと思います。